← 記事一覧

CES Innovation Awards / 2024—2026

更新日:2026年9月26日

感情は、測る対象から、
システムを動かす入力へ

From Measuring Emotion
to Acting on It

CES Innovation Awards 2024–2026の1,382製品を横断し、感情・気分・心理状態などを取得・分析する技術を抽出しました。26製品を「観測 / 推薦 / 適応」で追うと、感情情報の役割が、状態を知るためのデータから、体験や環境を変えるための入力へ移りつつある姿が見えてきます。

01 / 時系列変化

2026年、適応が最大のグループになった。

感情情報を取得・推定・記録する「観測(Observe)」、感情情報から提案や洞察を返す「推薦(Recommend)」、感情情報を入力としてシステム自身が体験・環境・動作を変える「適応(Adapt)」に分類しました。年ごとの対象数が異なるため、下図は構成比で比較しています。

観測 推薦 適応
2024
37.5%
50.0%
12.5%
n=8
2025
60.0%
40.0%
n=5
2026
23.1%
23.1%
53.8%
n=13
0%25%50%75%100%

適応(Adapt)の構成比。感情を「結果として表示する」だけでなく、次の動作を決める入力として使う製品が目立つようになっています。

Observe / Recommend / Adaptはキーワードで候補を抽出後、目視にて分類しています。

変化の中心は「感情認識の件数」ではなく、「感情情報を何に使うか」です。 2024年にも適応型は存在しますが、2026年では13製品中7製品が適応となり、感情がシステムを動かす入力として使われる例が最も多くなりました。

この比率はCES全体の市場シェアや成長率を示すものではありません。公式説明文から抽出した26製品内の構成変化を記述的に比較しています。

02 / 3段階

感情データが、情報から制御信号へ。

分類の違いは「どの感情を測るか」ではなく、取得した後に何をするかです。同じ感情データでも、使われ方によって製品の役割は大きく変わります。

観測

感情を知る。

感情・気分・心理状態を取得、推定、記録、可視化する。ここでは感情は「分析結果」です。

推薦

感情から、次を提案する。

取得した感情情報をもとに、レポート、洞察、推薦、ガイダンスを人へ返す。最終判断は人に残ります。

適応

感情で、システムが変わる。

感情情報を入力として、コンテンツ、UI、環境、教育、音、香りなどをシステム自身が変える。感情が制御信号になります。

03 / 製品例

同じ「感情テック」でも、役割は違う。

2024 / 観測

NuraLogix — Anura™ Magic Mirror ↗

30秒のビデオセルフィーから生理・心理状態を測定。Affective AIを使い、人のaffectを認識・測定・予測する例です。

2024 / 推薦

inDJ — inDJ for App ↗

カメラ、マイク、GPSなどから感情状態を評価し、リアルタイムのメンタルヘルスレポートと週次のinsightを返します。感情は「理解のための情報」として使われています。

2024 / 適応

Baracoda — BMind ↗

表情・ジェスチャー・言語を解釈し、moodに合わせて照明を適応。感情情報が環境制御へ直接つながる早い例です。

2025 / 推薦

L'Oréal — Mood Mirror™ ↗

メイクを見たときの顔の動きから感情反応を分析し、喜びにつながる色やスタイルへ導きます。感情が選択支援に使われています。

2025 / 適応

SONA AI EDU ↗

年齢・性別・感情をリアルタイム分析し、個別化した教育カリキュラムを提供。感情情報がそのまま学習体験の変更に入ります。

2026 / 適応

AI Turing Keys ↗

カメラとマイクからリアルタイム感情を検出し、その状態に合わせて音楽と画面上の楽譜、キー照明を生成。感情が生成体験の入力になります。

2026 / 適応

Deepscent AI ↗

画像、音楽、mood、環境文脈を入力に香りを生成し、状況変化に応じて動的に適応。感情・文脈が物理空間の出力へつながります。

2026 / 適応

LG — AI-powered In-Vehicle Solutions ↗

車内カメラで視線・表情・姿勢・emotionをモニタリングし、adaptive safetyとpersonalized interfaceを支援。感情が車内UIと安全機能の文脈に入っています。

04 / 分析から見えた2つの変化

01

適応型の比率が、3年間で大きくなっている。

適応(Adapt)は2024年12.5%、2025年40.0%、2026年53.8%。感情情報を取得・表示するだけでなく、コンテンツや環境、システムの動作を変える入力として使う製品が増えています。

02

感情を使う先が、体験設計へ広がっている。

対象製品では、健康状態の把握だけでなく、教育、音楽、香り、車内UI、スマートホームなどで感情情報が使われています。感情データは分析結果にとどまらず、製品体験を組み立てる材料になり始めています。

05 / 実験的プロダクト

FamilyCardGame

感情を「場」に返すと、対面のやり取りは変わるか。

CESの分析から見えたのは、感情を取得するだけでなく、その情報を次の体験を変える入力として使う流れです。FamilyCardGameでは、この考え方を対面のカードゲームで試します。

本来、目の前にいる相手の表情や反応は人が直接読むものです。しかし、一瞬の反応は見落とされたり、そもそも表情に出にくかったりします。そこで現在のプロトタイプでは、顔画像から感情を自動推定する代わりに、リアクションボタンを簡易な入力として使用します。

入力されたリアクションを記録するだけでなく、システムが「何か企んでるかも…?」のような観察的なヒントへ変換し、ゲームの「場」に返します。見落とされていた小さな反応を全員の共通イベントにすることで、会話や笑い、他のプレイヤーからの反応が生まれるのかを確かめます。

FamilyCardGameを開く ↗
FamilyCardGameの日本語画面。プレイヤーのリアクション『ひっひっひ〜』と、システムの観察的なフィードバック『何か企んでるかも…?』が場に表示されている。
本人のリアクション → 場へのフィードバック。 黄色はプレイヤーが押したリアクション、白い吹き出しはシステムが全員へ返す観察的なヒント。
01 / PLAY

ゲームで反応が生まれる。

カードやプレイヤー同士のやり取りによって、笑い、驚き、悔しさ、企みなど、さまざまな反応が生まれます。

02 / EXPRESS

反応を表出する。

リアクションボタンを簡易な代理入力として使います。システムを単純化すると同時に、普段は表情に出しにくい人にも反応を表出する別のチャネルを与えます。

03 / FEEDBACK

反応を「場」に返す。

システムが反応を観察的なヒントに変換し、全員が共有できる出来事にします。本人の言葉を繰り返すのではなく、周囲が思わず反応したくなる小さなきっかけとして返します。

04 / TEST

人間同士のやり取りは変わるか。

フィードバックによって、声をかける、笑う、ツッコむ、相手を見るといった反応が増えるかを観察します。介入が邪魔になるのであれば、それも実験の結果です。

EARLY OBSERVATION / 初期観察

「リアクションボタンがあると、少人数でも楽しい」という反応が初期テストで得られました。定量的な評価ではありませんが、リアクション機能が感情を記録するだけでなく、少人数の場でも発言や反応のきっかけを増やし、共有体験を活性化する可能性を示す初期観察です。

この実験で確かめたいのは、感情認識の精度ではありません。 人のリアクションを表出しやすくし、それを全員で共有できる形で場へ返すことで、対面コミュニケーションを増幅できるかを試します。現在はリアクションボタンを代理入力として、最小構成の Reaction → Feedback → Social Interaction を検証しています。

METHOD / SOURCES

データと計算方法

CES Innovation Awards 2024–2026の1,382製品を対象に、公式説明文から感情関連技術の候補をキーワードで抽出。用途をObserve / Recommend / Adaptへ自動分類後、目視にて最終分類しています。

キーワード一覧

Emotion

emotion emotions emotional mood moods affective sentiment facial expression facial expressions psychological state psychological states mental state mental states anxiety arousal valence stress level stress levels psychological stress emotional stress

Acquisition

detect recogniz infer analyz analys assess measur monitor track estimat sens classif evaluat identif interpret captur input record log

Recommend

recommend suggest guid advis insight feedback report visualiz coach alert notify personaliz

Adapt

adapt adjust chang modif control generat trigger respond dynamic automatic actuat

最終分類結果(26製品)